パブリックサインで振り返る平成
Column
昭和30年代、高度経済成長をむかえた日本では、自動車数の急増とともに一気に「車社会」に突入しました。
株式会社アークノハラは、安心安全な街づくりを目指し、街なかでの様々な課題を解決すべく、長年にわたり、道路標識や視線誘導標、歩行者用観光案内標識などのサイン、ガードレール・遮音壁などの多種の安全施設・ソリューションを提案、提供(設計、製造、施工)しております。
なかでも、道路標識は、道路交通の安全を確保し、歩行者や自動車運転者の円滑な通行を助けるための重要な交通安全施設です(※1)。また、昨今は日本を訪れる外国の方も多く、観光案内板等のパブリックサインを含め、訪日外国人旅行者にとっても分かりやすい道案内を実現するための整備が着々と進んでいます。
では、平成とはどんな時代だったのでしょう? 「安心安全な街の交通」の観点から、平成の約30年を振り返ります。
(※1)道路標識の種類や目的については、国土交通省HP内「道路標識の概要等」をご覧ください。
(http://www.mlit.go.jp/road/sign/sign/index.htm)
目次
見やすさ・分かりやすさの進化~技術編~
車を運転する人ならだれでもよく目にする道路標識。
ドライバーに安全な運転を促し、正しく道案内(誘導)をするためには、見やすさ(視認性)と分かりやすさ(判読性)が非常に重要です。
まずは、この見やすさ・分かりやすさの進化を技術の観点からご紹介します。
反射シートの進化はいつ、どのように?
日本では、江戸時代にあった木製の立札が標識の始まりと言われています。当時は、立札に書いたり塗ったりで、反射はしませんでした。しかし、日本の道路に自動車が一般的に走行し始めた大正、昭和と自動車が増えるにつれ、昭和9年(1934年)、警視庁による反射レンズ等の基準化(※2)をきっかけに、昭和30年代以降の「車社会」突入後、反射材料として標識に反射シートが徐々に採用されるようになりました。
(※2)当時の警視庁訓令「交通標識統一に関する件」で、都内では独自の道路標識が定められました。板面に反射レンズを埋め込み、夜間の見やすさを高めたこと、材質を鉄製にして破損を防いだことなどが特長です。 (参照元:福祉のまちづくり研究、https://www.jstage.jst.go.jp/article/jais/10/1/10_KJ00008025051/_pdf)
標識板は、ドライバーからの視線を考えて少し傾斜して設置されています。例えば、大型の案内標識を取り付ける場合、反射性能を高めて視認性をよくするために、通常約3度、前に傾けることになっています。さらに、東北地方などの積雪寒冷地域では、標識板の傾斜角度を30度程度まで大きくした事例もあります。積雪や吹雪によって雪が付着し、内容が読み取れなくなる場合があるためです。
アークノハラ 標識のプロからの“ちょっと豆知識”①|反射性能を高める設置角度の工夫は地域で違いが!! 標識板は、ドライバーからの視線を考えて少し傾斜して設置されています。例えば、大型の案内標識を取り付ける場合、反射性能を高めて視認性をよくするために、通常約3度、前に傾けることになっています。 さらに、東北地方などの積雪寒冷地域では、標識板の傾斜角度を30度程度まで大きくした事例もあります。積雪や吹雪によって雪が付着し、内容が読み取れなくなる場合があるためです。 【参考】http://www.mlit.go.jp/road/sign/sign/annai/hqa05.htm |
今では、大半の標識がアルミ板に特殊な反射シートを貼って作られています。その反射シートも、平成に入り道路利用者への利便性向上を図る中で、カプセルレンズ型(高輝度型)から広角プリズム型(超高輝度型)に進化し、反射時の明るさ・輝き度合いがアップしました。これにより、一般的に視機能低下が心配される高齢者ドライバーが夜間運転する際にも、十分な見やすさを確保できます。
■夜間の見え方_それぞれ、左半分が広角プリズム型、右半分がカプセルレンズ型
アークノハラ 標識のプロからの“ちょっと豆知識②|ドライバーにだけ反射してくる?! 「再帰性反射」という言葉をご存知ですか?「再帰性反射」とは、どの方向から光を当てても、その当てた方向に反射して戻ってくるという性質のことです。従来、標識にはこの再帰性反射を活かした反射シートが使われています。これなら、周囲への過剰または不要な光の拡散(光害)は避けられますし、必要な情報をドライバーに的確に認識させる方法として有効です。 |
朝夕の日差しもナンノソノ、逆光対策の進化はいつ、どのように?
昭和39年に開催される東京オリンピックに向けて、昭和38年(1963年)7月、当時日本で初めて名神高速道路の一部区間が共用開通しました。これを皮切りに、高速道路は全国に縦横無尽に整備され、多くの方の移動に役立っています。
しかし、東西に伸びる高速道路では新たな問題がドライバーを悩ませていました。
朝夕の時間帯になると、高架・盛土部など視界の開けた路線の標識板が朝日や西日による逆光で見にくくなるのです。
<スリット式の逆光対策標識板の登場>
野原グループでは、逆光でも見やすい標識板の開発をすすめ、平成17年(2005年)にスリット加工を施した「逆光対策標識板」の特許を取得。
■スリット式逆光標識板
この「逆光対策標識板」は、標識板の陰とスリットから漏れる光を利用して逆光時の見やすさを高めたものです。
開発担当者からのコメント |
見やすさ・分かりやすさの進化~デザイン編~
技術面の進化もさることながら、デザイン面でも、遠くからでも見やすい、直感的に意味がわかりやすい標識へと進化をしています。
フォントや色の進化はいつ、どのように?
目的地・通過地をはじめとする経路案内、地点案内、施設案内などが表示されている案内標識。
この案内標識、実は、一般道路と高速道路とで、色彩や書体に違いがあります。
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一般道路 |
高速道路 |
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首都高速:首都高グリーン |
NEXCO:NEXCOグリーン |
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文字 |
白 |
白 |
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一般道路 |
高速道路 |
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首都高速:新ゴ |
NEXCO:ヒラギノ |
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英文 |
ヘルベチカ |
ビアログ |
高速道路については、昭和38年(1963年)以降、和文フォントに「道路公団標準文字(通称:公団ゴシック/公団文字)」というオリジナルの書体が利用されていました。
しかし、平成17年(2005年)の道路四公団民営化を経て、平成22年(2010年)、より判読性やデザイン性に優れる案内標識とすることを目的にNEXCOが管理する高速道路においては「ヒラギノ」という誰もが読みやすい書体に統一されました。
アークノハラ 標識のプロからの“ちょっと豆知識”|書体編 高速道路では、かつては「公団文字」により、例えば、三鷹の「鷹」を略するといった例もありました。しかし「公共の場所には正しい日本語の方が良いのでは」ということもあり、廃止する流れになりました。 旧「公団文字」は、同じ漢字であっても、漢字同士の調和等の観点から、漢字の特長を踏まえ、より美しく、見やすいように工夫されていました。 |
このように、標識は様々な観点から、見やすく、分かりやすく進化を続けています。
標識準備等の違いにみる二つの東京オリンピック
2021年の東京オリンピックは、国をはじめとする行政、民間企業が一緒になって多方面にわたる準備を進めています。道路案内標識も外国の方を含めた全てのひとにわかりやすいものへと、着々と整備が進んでいます。
ここでは、初代と当代の二つの東京オリンピックを、標識準備等の観点から比べてみます。
初代 東京オリンピック | 当代 東京オリンピック | |
開催決定 |
昭和34年(1959年)5月26日に西ドイツのミュンヘンにて |
平成25年(2013年)9月7日、ブエノスアイレスにて |
開催期間 |
昭和39年(1964年)10月10日から10月24日までの15日間 |
令和2年(2020年)7月22日から8月9日までの19日間 |
道路整備 |
高速道路の開通 など |
首都圏3環状道路の整備 など |
標識準備 |
オリンピック開催を機に、高速道路用の標識が設置される |
外国の方にもわかりやすい多言語対応をキーワードに、誰にでもわかりやすい道路案内標識の整備が進行中 ①英語表記の改善 |
英文表記の進化はいつ、どのように?|ローマ字から英語併記へ
昭和25年(1950年)、終戦後のGHQ占領下において、標識に英文の補助板が取り付けられました(※1)。
その後、昭和61年(1986年)にローマ字併用表示が基本とされていましたが、平成26年(2014年)の案内標識における和文・英文の併用表示(一部の施設)への変更、平成29年(2017年)には「徐行」や「一時停止(止まれ)」などの一部の規制標識についても英語が追記されることになりました。
(※1)総理府・建設省令「道路標識令」の改正により、ヨーロッパ型の記号表示を原則とし、これに日本文、英文を入れることになりました。 (https://www.mlit.go.jp/road/sign/sign/douro/hist01.htm)
【参考】一般社団法人 全国道路標識・標示業東京都協会 会報誌(Vol15)
最近の公共サインでは、英語以外の言語も積極的に取り入れる動きが見られます。
標識に表示されているイラストのような図形・記号はいつ、どのように?|ピクトグラムの活用
今や全世界で当たり前の「ピクトグラム」(※2)、実は、昭和39年(1964年)の東京オリンピックで初めて全面導入されたのをご存知ですか?当時は施設と競技の2種類のピクトグラムが生まれました。
その後、標識においても、徐々に観光地の著名地点案内等でピクトグラムが使われはじめていましたが、平成12年(2000年)の「交通バリアフリー法」の施行により、道路利用者が円滑に移動できるように交通機関や公共施設等のイラストが統一されるようになってきました。今では、案内標識へのバリアフリールート(身体障害者等が円滑に運行できるルートを示すシンボマーク)の記載も一般的になってきました。
(※2)ピクトグラムとは、「不特定多数の人々が利用する公共交通機関や公共施設、観光施設等において、文字・言語によらず対象物、概念または状態に関する情報を提供する図形です。視力の低下した高齢者や障害のある方、外国人観光客等も理解が容易な情報提供手法として、日本を含め世界中の公共交通機関、観光施設等で広く掲示されています。」(国土交通省HPより引用)
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000145.html
2020年東京オリンピックに向けて
外国の方が一目で分かり、理解しやすい道路案内の整備に向けて、案内標識において統一されたピクトグラムと反転文字の活用が進んでいます。
~案内標識の例~
【引用】国土交通省、平成28年1月29日、同年9月2日発表「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた道路標識の改善を推進します」より
http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000615.htm
https://www.mlit.go.jp/common/001143702.pdf
また、平成25年(2013年)には観光庁から、観光地域を中心に案内標識における英語表記の取組みを先行推進することが発表されました。
平成28年(2016年)には、国土地理院から、ホテルやレストランなど外国人がよく訪れる施設15種類の新地図記号が発表されたほか、地名等の英語表記統一についても発表されました。
実際、街なかの住居表示街区案内でも、このとおり、最新のピクトグラムや英語表記を確認できます。
【出典】国土交通省国土地理院HPより
https://www.gsi.go.jp/common/000138872.pdf
~住居表示街区案内の例~
アークノハラ 標識のプロからの“ちょっと豆知識”|外国の方のための多言語対応 以前は、各自治体が設置するサインと交通機関での案内表示とでは異なる表現や表記が多く存在し、観光立国に向け増加が予想される外国人観光客への対応には不十分な部分がありました。平成26年(2014年)に設置された、2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会では、外国の方のために「言葉のバリアフリー」を実現するため、交通、道路、観光・サービスの各分野における「取組方針」を策定し、統一的な取組みを推進しています。弊社でも、すでに受注しているサイン関係の物件での多言語対応のための更新作業を進めています。 |
少し視点を変えて|外国人観光客に、安心安全なFree Wi-Fiを
アークノハラは、地域コミュニティーの形成にも注力しており、2015年より、エリア情報の充実と地域観光に役立つ「ハイブリッドサインシステム(Wi-Fi型/Beacon型)」も手掛けています。
東京都の台東区、中央区で設置いただいている「ハイブリッドサインシステム(Wi-Fi型)」は、サインにIoTを取り入れた製品で、歩行者用の観光案内・地図情報とWi-Fiアクセスポイントを表示しています。
■ハイブリッドサインシステム(Wi-Fi型) 中央区
「ハイブリッドサインシステム(Wi-Fi型)」自体も、Free Wi-Fiを提供しているので、例えば訪日外国人旅行者は日本国内で使用できるSIMカードを購入しなくても、安全安心な無料のFree Wi-Fiを利用してスマートフォンをインターネットに接続することができます。
多言語対応に向けた最近の動き
西暦 |
平成 |
街・交通に関する社会の動き |
案内標識の多言語対応の進化 |
2013年 |
25年 |
・訪日外国人数が年間1,000万人を突破 ・東京が2020年オリンピック開催地に決定。以降、オリンピック準備に向けた整備が開始 |
<国土交通省 観光庁> 観光地域を中心に、案内標識における英語表記の取組みを先行推進 |
2014年 |
26年 |
2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会が設置 |
・案内標識において、駅や空港、病院といった特定の施設については、国土交通省が定める同一の英語表示とすることに(略称も可)。 ・案内標識において、ピクトグラムの表示が可能に。 |
2015年 |
27年 |
<国土交通省> 「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国土交通省の取組」を発表(http://www.mlit.go.jp/common/001113047.pdf ) |
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2016年 |
28年 |
・訪日外国人数が年間約2,400万を記録 ・新国立競技場が着工 ・アメリカ、フロリダ州にて、運転支援機能が搭載されたテスラ・モデルSが18輪トレーラーと衝突し、テスラの運転手が死亡する事故が発生 |
<国土地理院> ・15種類の新地図記号を発表 ・地名等の英語表記統一を発表 ・住居表示街区案内図等に新地図記号が反映開始 ・英語表記の改善、ピクトグラムや反転文字の活用 |
2017年 |
29年 |
・高速道路のナンバリング開始 ・自動運転の公道実証実験が盛んに |
徐行、一時停止など一部の規制標識にも「STOP」や「SLOW」の英語が追記 |
2018年 |
30年 |
訪日外国人数が年間3,000万人を突破 |
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名所で振り返る、平成の道路の安全
安全安心な街の道路交通、より美しい景観の実現に向けたアークノハラの取組みを、平成の名所とともに紹介します。
横浜みなとみらい(平成元年)|地域特性を考慮した大きな英字表示
■横浜みなとみらい地区に建つ案内標識
横浜市の再開発事業「みなとみらい21」で整備が始まったころ、この「みなとみらい地区は」外国の方が多いので、他の地域と比べて標識板の英字の文字高がサイズアップされています。一般的には和文に対して2分の1サイズであるところ、この地区では3分の2となっているのです。
なお、英字の文字高を和文の3分の2にするというルールは、現在東京都でも実施されています。
東京国際空港 (平成5~22年)|技術とデザインの両面で、見やすさとわかりやすさをサポート
羽田空港とも呼ばれる東京国際空港(東京都大田区)は、空港利用者数の増加、航空需要の増加にともない、1984年(昭和59年)以降拡張事業が実施されています。アークノハラでは、飛行機の安全な発着、空港利用者の利便性向上のため、以下の通り、環境整備に協力いたしました。
<東京国際空港における標識の進化>
西暦 |
平成 |
拡張事業の概要 |
標識_見やすさと分かりやすさの工夫 |
~1993年 |
~5年 |
東京国際空港の機能拡大により、沖合に新たな滑走路)及び第1旅客ターミナル(国内線ターミナルビル/1993年9月27日に供用開始)の整備
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新規の構内道路及び周辺道路に標識を製作・設置 ①カプセルレンズ型の反射シートに照明をプラス ②景観を考慮して標識板と支柱の嵌合部分には化粧カバー等を施す。 |
~2004年 |
~16年 |
・第2旅客ターミナルビル(2004年12月1日供用開始)の完成
・空港連絡道路(2004年12月1日供用開始)の完成
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第2旅客ターミナルビルの完成に伴い、構内及び周辺道路の標識の見直しが行われ新たな標識を製作・設置 ①広角プリズム型の反射シートを採用、反射性能アップにより照明は撤去 ②案内する施設の増加により、ピクトグラム活用や特殊な色彩を利用しての案内も実施 |
~2010年 |
~22年 |
羽田新国際線旅客ターミナル(2010年10月21日供用開始)の完成 |
構内及び周辺道路へ標識を製作・設置 |
■上部(赤枠部分)に照明がついていた頃(上)と現在の様子(下)
■色彩を工夫して、より分かりやすい案内に
東京臨海副都心 台場地区 (平成8年)|標識の設置は景観を重視
平成8年(1996年)より開始された、臨海副都心(台場地区、青海地区、有明北地区、有明南地区)の開発計画第二期にて、台場地区へのフジテレビ本社屋移転(平成9年/1997年)等の準備に伴い、道路整備が始まりました。
この台場地区は「お台場」とも呼ばれ、標識は、景観に配慮した色調に統一させるため、メッキの支柱にグレーの塗装を施したほか、標識板と支柱の接合部分もむき出しではなく鋳物でカバーを付けました。
圏央道 桶川北本IC~白岡菖蒲IC間(平成27年)|東西に延びる区間の逆光対策
圏央道は首都圏3環状道路の一つで、2020東京オリンピックに向けた「道路輸送インフラ整備」の対象にもなっています。
アークノハラ 標識のプロからの“ちょっと豆知識”⑤|世界とは違う、日本ならではの標識 国連標識の流れと一線を画し、日本独自の形とデザインに進化を遂げた標識をご存知ですか? ①一時停止(止まれ) 世界の大半は八角形ですが、日本では逆三角形です。 ②横断歩道(横断歩道大人ひとり・子供二人・自転車・人と自転車) 世界の大半は三角形ですが、日本では歩行者保護の視点から、特別な五角形とされました。 |
自動運転社会の到来に向けた標識等のインフラ整備
日本政府は、2020年に限定地域での無人自動運転移動サービスの実現(自動運転レベル4)を目指しています。日本各地では、自動運転の実証実験が盛んに実施され、自動運転の社会実装に向けた社会の注目度が一層高まっています。
アークノハラは、交通安全施設製品メーカーとしての「安全・安心な街づくり」のノウハウを活かし、自動運転車両が社会に受容されやすい環境づくりに貢献するため、道路環境の安全・安心を考慮した製品を開発しています。
街・道路と車両が協調しあう次世代交通インフラの整備
従来の道路交通関連インフラは、主に、目が見える人と手動運転車両ドライバーのために設計されています。私たちは、自動運転サービスの社会実装に向けて、自動運転車両自体の高度知能化に加えて、道路や街側の賢さを向上させ、社会全体のバランスを重視していく必要があると考えています。
今後、かなりの年月にわたり、手動運転車両と自動運転車両が混在します。
私たちは、道路環境整備の観点から、歩行者(子供から高齢者まで)を含む社会全体の安全安心、そして社会受容性を高めるためのサポートをしていきたいと考えています。
<アークノハラが取り組むインフラ整備>
次世代交通インフラの整備 |
対象 |
目的 |
路車協調表示装置 自動運転車両の接近をリアルタイムで知らせる |
手動運転者 自転車 歩行者 |
自動運転車両と手動運転車両の混在や、互いの動き・接近状況をリアルタイムで知らせ、不測の事態に備えたり、注意を喚起する |
路面表示材 自動運転車両の走行路線であることを路面に象徴的に表示する |
自動運転車両 手動運転車両 自転車 歩行者 |
自動運転車両の存在を周知し、注意を喚起する |
走行表示・乗り場案内サイン 自動運転車両の走行場所を表示する |
自動運転車両 手動運転車両 自転車 歩行者 |
自動運転車両の走行路および自動運転車両の乗り場を地域住民のみなさまに案内する |
■左から、通行表示サイン、路面表示材、車両の動きを事前に知らせる「路車間協調表示装置」(夜間の様子)、自動運転車両の乗り場案内
このようにアークノハラでは、次世代の交通インフラ整備に貢献すべく検討を行っています。
番外編|道路自体も進化している?!
ここでは、少し視点を変えて、標識・パブリックサイン以外の最新事情をご紹介します。
道路のひび割れを抑制し、走りやすい道路の長寿命化をめざす(2015年~)|GlasGrid®(グラスグリッド)
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交差点などの交通量の多いところや温度差の激しいところでは、交通荷重や気温差による地盤収縮に起因してリフレクションクラック(既設舗装のひびわれやコンクリート目地部の直上に発生するひびわれのこと)が発生します。このリフレクションクラックが発生すると、道路状態が悪化し、安全な走行に支障をきたします。
アークノハラでは、道路交通にとって危険なクラックや舗装のひび割れを抑制するシート「GlasGrid®(グラスグリッド)」を日本の道路に普及させたいと考えています。
「GlasGrid®(グラスグリッド)」は、アスファルト舗装の寿命アップ、補修回数の減少による道路のライフサイクルコストの最小化をサポートします。
これまでに、道路や高速道路、工場敷地内、空港でも採用されています。
無人で車両通行規制を実現(2017年~)|自発光ソフトライジングボラード
自発光ソフトライジングボラードは、車両による住宅街などでの悲惨な交通事故防止、タウンマネジメントやロードプライシング(特定区域への進入又は特定の道路の通行等に対し、課金等を行うことにより交通量を抑制すること)に役立つ新たな安全施設です。
生活道路(抜け道)・商店街(時間外の通行)・駐車スペース(違法駐車)および専用道(違法通行)の違法利用を防止させるとともに、交通事故防止や許可車両のスムースな利用にも役立ちます。
また、タイマー、リモコンおよび各種車両認識システムと連携することで、無人での道路通行規制を実現します。
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今後は、観光地の渋滞対策や防災・減災対策、民間駐車場など様々な分野への提案を進め、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催期間中の競技場周辺での車両制限等への導入を目指しています。
まとめ|標識・パブリックサインにまつわる動きを年表でみてみよう
標識・パブリックサインの進化の観点から、平成の約30年間を年表にまとめてみました。
<平成_1989年1月~2019年5月>
西暦 |
平成 |
街・交通に関する社会の動き |
パブリックサインの進化 |
1989年 |
元年 |
横浜ベイブリッジが開通 |
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1991年 |
3年 |
昭和61年(1986年)12月から続いていたバブル景気が崩壊(12月) |
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1992年 |
4年 |
第二次交通戦争(自動車の重大事故による死者が大幅に増加) |
①横断歩道・自転車横断帯(407の3/指示標識)の新設 ②道路標示「横断歩道(201)」の様式が側線を省略したゼブラの様式を新設 |
1993年 |
5年 |
・道の駅制度が開始 ・東京湾レインボーブリッジが開通 |
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1995年 |
7年 |
阪神淡路大震災が発生 |
①案内標識に公共施設等のシンボルマーク等を追加することが明確化 ②駐車場案内標識にトイレの表示(身体障がい者の利用が可能な場合は車いすの記号も表示) |
1997年 |
9年 |
・東京湾アクアラインが開通 ・フジテレビ本社屋が台場地区に移転 |
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2000年 |
12年 |
・「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(略称:交通バリアフリー法)の制定 ※平成18年(2006年)廃止
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・移動円滑化に関する標識の新設 ・歩行者系サイン(案内標識)への「バリアフリールート」(身体障害者等が円滑に運行できるルートを示すシンボルマーク)の記載が開始 ・標識と地図が合体した地図標識が誕生 |
2001年 |
13年 |
ETCの一般利用が開始 |
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2002年 |
14年 |
2002 FIFAワールドカップが日本と韓国で開催 |
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2005年 |
17年 |
道路四公団が民営化 |
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2006年 |
18年 |
新「バリアフリー法」が制定 |
<アークノハラ> 逆光対策標識板(スリット式)の特許登録 |
2007年 |
19年 |
自転車事故の増加(歩道他) |
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2008年 |
20年 |
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案内標識の距離表示が「Km」から「km」に変更 |
2009年 |
21年 |
①交通規則基準の改正により、生活道路の速度制限は原則30km/hとする「ゾーン30」制度が開始 ②75歳以上の高齢者による自動車事故の増加を背景に、高齢運転者が安全に運転を継続できる道路交通環境を整備すること等を目的に、交通法の改訂 -高齢者に対する講習予備検査(認知機能検査)の導入 -75歳以上の方の免許更新の際には、講習予備検査を受けることになります。 |
①「ゾーン30」の標識(規制標識)の新設 ②高齢運転者等に配慮した高齢運転者等標章の制定と専用駐車スペースへの駐車を示す補助標識「車両の種類」(503-D)を追加 ①普通自転車専用通行帯(327-4/規制標識)の新設 ②高速道路(NEXCO管轄)の和文フォントが、視認性に定評があるヒラギノ角ゴシック体W5に統一 |
2011年 |
23年 |
・東日本大震災が発生(3月) ・警察庁交通局長通達にて、各都道府県の人口集中地区の面積に基づき、全国で3,037か所を目標に「ゾーン30」を整備するよう指示(9月)【参考①へ】。 |
①自転車・歩行者の事故増加に対応するため、「自転車一方通行」(326の2)/規制標識)が新設
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2012年 |
24年 |
山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルの崩落事故 |
以降、標識も景観重視から安全重視へ。 標識板と支柱の接合部分は、点検をしやすいように敢えてむき出しにしている。 |
2013年 |
25年 |
・訪日外国人数が年間1,000万人を突破 ・東京が2020年オリンピック開催地に決定。以降、オリンピック準備に向けた整備が開始 |
<国土交通省 観光庁> 観光地域を中心に、案内標識における英語表記の取組みを先行推進 |
2014年 |
26年 |
2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会が設置 |
・高速道路上での、「サービス・エリア、道の駅の予告」を設置 ※高速道路の標識は緑板が通常だが、「一般道の」道の駅を案内しているので、青板がベースになっている ・案内標識において、駅や空港、病院といった特定の施設については、国土交通省が定める同一の英語表示とすることに(略称も可)。 ・案内標識において、ピクトグラムの表示が可能に。 |
2015年 |
27年 |
<国土交通省> 「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国土交通省の取組」を発表 |
<アークノハラ> ・「ハイブリッドサインシステム」を発売 ・日本の道路を変えるべく、道路交通にとって危険なクラックや舗装のひび割れを抑制するシート「GlasGrid®(グラスグリッド)」の取扱いを開始 |
2016年 |
28年 |
・訪日外国人数が年間約2,400万を記録 ・新国立競技場が着工
・アメリカ、フロリダ州にて、運転支援機能が搭載されたテスラ・モデルSが18輪トレーラーと衝突し、テスラの運転手が死亡する事故が発生 |
<国土地理院> ・15種類の新地図記号を発表 ・地名等の英語表記統一を発表 ・住居表示街区案内図等に新地図記号が反映開始 ・英語表記の改善、ピクトグラムや反転文字の活用 |
2017年 |
29年 |
・高速道路のナンバリング開始 ・自動運転の公道実証実験が盛んに |
徐行、一時停止など一部の規制標識にも「STOP」や「SLOW」の英語が追記 |
2018年 |
30年 |
・訪日外国人数が年間3,000万人を突破 |
<アークノハラ> ①エリアマネジメントに役立つ「ソフトライジングボラード」を発売 ②自動運転の社会実装にむけたインフラ整備の一環として、「路車間協調表示装置」を考案 |
2019年 |
31年 |
<内閣官房IT総合戦略室> ・自動運転に関して、インフラ協調型の自動運転環境の実現にむけた、政府(関係省庁)の取組みを紹介【参考②へ】 |
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【参考①】登下校時間を中心に交通規制を行う「スクールゾーン」は、昭和47年(1972年)から始まりました。
http://www.nhk.or.jp/po/zokugo/1558.html
【参考②】詳しくは、政府発表資料をご確認ください。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dourokoutsu_wg/dai3/siryou1-2.pdf
最後に
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
私たちは、令和の時代もその先も「安心安全な街づくり」に貢献すべく、誠心誠意努めてまいります。
今後とも末永くご愛顧賜りますようよろしくお願いいたします。